消費者金融には多くの倒産の形態(破産・民事再生・会社更生)があり、その事例として、専業中堅だった「RHインシグノ」と「ニッシン」の破産、中小の「ダイレクトワン」と「アエル」の民事再生、専業大手「武富士」の会社更生について説明します。
消費者金融の倒産の大きな原因が「グレーゾーン金利」を背景とした「過払い金」の請求にあり、専業大手「アコム」にも倒産の危機があったものの、経営改革によって生き残ったことについても説明します。
消費者金融が倒産しても”借金”が無くなる訳ではなく、反対に「過払い金」はほとんど戻ってこないということを説明し、消費者金融の倒産に際しての心構えなどの注意点をまとめてみました。
倒産は消費者金融においても無関係な話ではなく、その3つの形態というのは次のようなものです。
厳しい経済状況は消費者金融の業界でも人ごとではなく、専業中堅であったところでも倒産(破産)してしまったという事例はたくさんあるのです。
これまでに倒産(破産)をしてしまった消費者金融には、次のようなところがありました。
「RHインシグノ」は、1964年に北海道知事に貸金業登録をし、2009年に社名を「RHインシグノ株式会社」に変更、2012年に金融商品取引法違反で課徴金1200万円の処分を受けてしまいました。2014年には社名を「リラエンタープライズ株式会社」と変更するものの、2017年になって破産手続き開始が決定されたのでした。
「ニッシン」は、商号を1990年に「株式会社ニッシン」、2006年に「NISグループ株式会社」に変更、同年に融資金利を18%以下に引き下げて「グレーゾーン金利」からの撤退をします。2010年には貸金業を廃止し、2012年に民事再生手続きを廃止して破産手続きの開始が決定され、2013年には破産手続きが結了しました。
これまでに倒産(民事再生法申請)をしてしまった消費者金融には、次のようなところがありました。
「ダイレクトワン」は、1956年に「丸和商事株式会社」として設立され、1977年以降に消費者金融に参入、「ニコニコクレジット」と言うブランド名で営業していました。過払金返還請求の増加と貸金業法改正によって収益が悪化し、2011年に民事再生法適用の申請を行ない、2012年に「ダイレクトワン株式会社」となったのです。
「アエル」は、1969年に「山一物産株式会社」として創業、1983年に「日立信販株式会社」に商号変更しましたが、「山一證券」や「日立グループ」とはまったく関係がなく、不正競争防止法違反で「日立クレジット」から提訴されました。2001年に変更した現商号もまた他の事業者と競合し提訴され、敗訴という結果となったのです。
2003年、グループ会社の消費者金融「ナイス」と酒類ディスカウントストア「サリ」とともに会社更生法の適用を申請し、2007年には更生手続きを終結させます。しかし、過払金変換請求が続き、貸金業法改正の影響もあって事業は回らなくなり、2008年になって民事再生法の適用を申請したのでした。
倒産の3つ目の形態である会社更生法の適用による手続きは、株式会社を対象としているという側面から、けっこうメジャーな会社が名前を連ねています。
これまでに倒産(会社更生手続き)をしてしまったメジャーな会社には、次のようなところがありました。
社名 | 業種 | 申請年 |
---|---|---|
大王製紙株式会社 | 製紙メーカー | 1962 |
株式会社筑摩書房 | 出版社 | 1978 |
株式会社吉野家 | 外食チェーンストア | 1980 |
三光汽船株式会社 | 海運会社 | 1985 |
日活株式会社 | 映画製作、配給会社 | 1993 |
ライフカード株式会社 | クレジットカード会社 | 2000 |
ハウステンボス株式会社 | テーマパーク | 2003 |
株式会社日本航空 | 空運業・持株会社 | 2010 |
TFK株式会社 | 消費者金融 | 2010 |
「TFK株式会社」は、旧社名「株式会社武富士」でブランド名「武富士」で消費者金融をやっていた、かつては専業大手の有名な会社でした。
1966年に前身の個人事業「富士商事」として創業し、1968年に「有限会社武富士商事」、1974年に「株式会社武富士」となります。「団地金融」をきっかけに”高利貸し”を行ない、創業者の会長一代で消費者金融業界ではトップにまで上り詰めました。
しかし、経営方針や体質を批判されることも増え、それらの出版社やライターを提訴することもありましたが、多くは敗訴という結果となっています。そして、2003年に「ジャーナリスト宅盗聴事件」を起こして会長が逮捕・有罪判決を受けて辞任に追い込まれます。
2000年代後半になると、「武富士」に対しても過払金請求が増加しはじめ、ついに2010年に会社更生法の適用を申請するに至るのでした。事業分割、社名変更を経て、「TFK株式会社」は2017年に清算され、法人としての存在を終えたのです。
消費者金融の倒産の原因の多くは、専業大手「武富士」を始め専業中堅「ニッシン」の他、「ダイレクトワン」・「アエル」などの倒産の経緯にもあったとおり、「グレーゾーン金利」を背景とした「過払い金」の返還請求にあったのです。
「利息制限法」では金銭を目的とした消費貸付上の利息契約について、次のような規定を設けて、超過部分については”無効”と定めていました。
これを「上限金利」として、超過する部分には支払う義務は無いとし、任意に支払ってしまった部分の返還請求は行えないとしていたのです。しかし、平成18年にその規定は削除されることとなり、「過払い金」の返還請求が可能となったのでした。
また、「貸金業法」の登録を受けた「貸金業者」は一定の条件を備えていれば、有効な利息の債務の弁済とみなす(みなし弁済)という規定がありました。その条件とは、次のような内容です。
この規定は平成21年に廃止され、この規定によってできなかった「利息制限法」に定める利息の超過部分を返還請求できるようになったのです。
平成22年施行の「貸金業法」と「出資法」の改正があるまでは、「出資法」に定められた金利が一般的にはお金を貸す時の金利の上限となっていました。その規定は、以下の通りの内容でした。
つまり、この二つの規定(利息制限法・出資法)の金利年15%(又は18%・又は20%)から29.2%(又は29.28%)の間が「グレーゾーン金利」となっているのです。
法改正によって「グレーゾーン金利」が”グレー”ではなくなると、消費者金融専業大手のブランド「武富士」・「アコム」・「アイフル」・「プロミス」を運営する会社は、合わせて1兆7千億円もの赤字を出すこととなりました。
結果、「武富士」は前述のとおり倒産することとなり、他の専業大手も倒産の危機を迎えたのです。そんな中で、「アコム」は経営改革を実施して、今現在も消費者金融専業大手として生き残っているのです。
「アコム」では、他の消費者金融の先駆けとして、制限利率を12~18%にするという大改革を断行し、新たな「過払い金返還請求者」の発生を食い止めました。これによって貸付による利息収入は減っても、利息返還の費用計上が無くなったのです。
更に「アコム」では、生き残りの3本柱となる次のような経営改革も行いました。
もちろんこの経営改革の中には7百名にも及ぶ人員削減という大リストラもあり、けして簡単なものではありませんでした。しかし、改革はうまく進められたようで、平成24年3月期からは利益が出るようになったようです。
「グレーゾーン金利」を背景とした「過払い金」の返還請求の対応によって、倒産の危機が多い消費者金融ですが、利用者にとって一番の気になる点は、自分の借入金の返済がどうなるのかということでしょう。
結論から言って、消費者金融が倒産したからといって、借入していたお金の返済義務が無くなる訳ではなく、そのまま何の変りも無く”借金”は残り続けるのです。
キャッシングの契約は個人と個人がお金を貸し借りするものとは違って、借金の返済義務は失効しないのです。お金の貸主である消費者金融には”債権”という権利があるのですが、この権利は倒産した場合には他の会社に譲渡することができるため、けして消えてなくなるということがありません。
倒産した消費者金融からの”借金”は、その消費者金融の財産となっています。会社自体が亡くなってしまう倒産の「破産」であっても、会社の再生を目指す「民事再生」や「会社更生」という倒産でも、”借金”は財産なのでかならずどこか他の会社に引き継がれることとなります。
当然、返済内容についてもキャッシング契約がそのまま引き継がれることとなりますので、新しい”貸主”から「今すぐ全額返済してくれ」というようなことにはなりません。それまでどおり、何の変りも無く”借金”の返済は続けられていくため、その点は安心と言えるでしょう。
一方、これまでの借金に関して「過払い金」があり、その返還請求ができる人にとっては、消費者金融の倒産は充分な注意が必要です。
「過払い金」の返還請求は、”借金”を完済した人の権利ではありますが、消費者金融が倒産してしまうと、ほとんどの「過払い金」は戻ってこないというのが一般的なのです。
消費者金融が倒産して破産手続きに入ると、その財産は破産管財人の管理下に置かれます。そして、全ての債権者に対して債権額に応じた”平等な”配当されることになります。
倒産するほどの会社の財産ですから、その額には限りがあります。つまり、平等な配当によって、一人一人に返還される「過払い金」はかなりな減額になることは目に見えている事なのです。
倒産のもうふたつの形態「民事再生」と「会社更生」についても同様で、元々取り戻せるはずだった「過払い金」元本に対して、数パーセントほどしか返還されないというのが常識なのです。
ちなみに、実際に倒産した消費者金融の「過払い金」返還の配当率がどうであったかというと、「クレディア」で40%、「アエル」で6.812%、「武富士」で3.3%、「ダイレクトワン」で1.65%というものでした。
消費者金融が倒産してしまった場合に備えて、”これだけは”ということを心掛けておかなければなりません。
これまで見てきた消費者金融の倒産に関することや、「過払い金」に関して重要なことをまとめてみると、次のようになります。
兎にも角にも、いくら大きな消費者金融でも倒産の可能性はゼロではなく、倒産で”借金”が消える訳ではないということ。反面、「過払い金」請求の権利には制限があり、減額や請求権期限があることを念頭に、早め早めの対応が必要なのです。
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